第2章・なぜBTSは世界のアイドルになったのか?”WINGS”〜
”WINGS"イメージの原案はヘルマンヘッセの「ダミアン」だった
“WINGS”のMVでは、曲の冒頭にリーダーRMの声でヘルマン・ヘッセの「ダミアン」の一節が朗読された。イメージは、「ダミアン」のストーリーとリンクして、全編にアブラクサスという鳥やリンゴが印象的に現れる。小説の主人公、ジンクレールは、自分を大きく見せようとしてリンゴを盗んだと嘘をつき、その後悪童に脅される結果になる。小さな嘘は、大きな危険を孕んでいるという教訓的な戒めがMVの映像と二重写しになる。
“BEGIN” from “WINGS”


“BOY MEETS EVIL” from “WINGS”
「ダミアン」の中に「卵から雛が出ようとする時」という表現があるが、まさに殻を破れずにもがき苦しむ若者の姿を、JーHopeが素晴らしいダンスで表現する。

事実、彼らはARMY(BTSのファン)に拘り、いつもARMY と共にあると言う。孤独なティーンズがどれだけ傷付きやすく死に近いかを、彼らは知っている。
暗い世界と明るい世界は、パラレルワールドの様にいつでも簡単に反転する。。。BTSは悩めるティーンズに向けて警告している。
(出発点のターゲットは、確かにティーンズだったと思う。今や、悩める全世界となったが。。。)
”WINGS"の原案本であるヘッセの「ダミアン」のテーマは、「己に返り、自我を見つけよ!」という深いものだった。”WINGS"のシリーズにも”I NEED U”を思い出させるシーンや、それをイメージさせる映像があり、ストーリーはますます謎めいて行った。
まるで詩を読む様に、行間を読んでいく様なストーリー展開は非常に多くのセオリーを生み、それが人気の秘密でもあった。主に、ヨーロッパのティーンズが強く反応していた様に思う。
そして、”WINGS外伝”として”NOT TODAY”がリリースされた。
負けるのは明日で良いから、今日は戦え!負けるのは今日では無い、今日では無いんだ!」
という力強い歌と、黒子数十名を引き連れての大パフォーマンスだった。アメリカでの人気に火がついたのは、この頃だと思う。

“ANSWER”は、非常にポジティブなマインドフルネスだった!
そして、最終章となるシリーズ”LOVE YOURSELF”の原案本が発表され、それを読んだ時は衝撃だった。これが答えだったのだ!紹介された”Into The Magic Shop”は、非常にポジティブなマインドフルネスを教えてくれる本だった。
この本は「スタンフォード大学の脳外科医が教わった人生の扉を開くマジック」というサブタイトルが付いている。いわゆるマインドフルネスについて書かれた非常に感動的な内容だった。
学校や家庭や秩序に背を向けて生きても、自分のプライドだけは捨てずに自分自身を信じなさい!自分の人生は、自分でしか決められないのだから、とこの本は言っている。
防弾少年団の意味とは、「10代20代の抑圧や偏見を止め、自分達の音楽を守り抜く」というものだが、もちろん音楽と言っているのはそれだけでは無く、大切なものを見失わず生きて行こうというBTSの願いが、そこには込められている。そして、一緒に歩いて行こうと言っている。
K-POPの中には、他にも素晴らしいグループは沢山いる。しかし、やはりBTSでなければと思わせるのは、大きなストーリー展開されたMVの数々、そこで表現されるティーンズの孤独感や反逆精神を理解しながら、そこにとどまるのでは無く立ち上がれ!と肩を押してくれる彼らの明るさや優しさが、今までに無い世界を作り出しているからだと思う。
や秩序に反抗するアナーキーなグループや歌は、沢山あった。しかし、それらは全て反逆と問題提起と嘆きに終わっている・・・BTSは何も諦めない。
人生の扉を開くマジック

そして、”LOVE YOURSELF”のイメージの土台となった”Into The Magic Shop”は、脳と心臓がどの様に関係し共鳴し、人生に変革をもたらすのかを、スタンフォード大学の脳外科医の人生を通して、「人生の扉を開くマジック」という形で、そのマジックのかけ方をとても優しく教えてくれている。
人間は全てを肯定し、自分のなりたい姿を強くイメージすれば絶対になれると、この本は教えている。
・どんなに環境が苦しくても、失望したとしても、負けてはいけない。明日負けたとしても今日は負ける日では無い。(”NOT TODAY"より)
・自分自身に立ち返り、自我を見つけなさい。(ヘッセ、ダミアンより)
・環境が人を不幸にするのではなく、自分の心が不幸を作っているだけだ。(Into The Magic Shopより)
・夢の未来は自分が強くイメージすれば絶対に叶う。それは、まず自分自身を愛する事から始めるのだ。(Into The Magic Shopより)
だから、負けずに一緒に歩いて行こう!
というのが、防弾少年団のメッセージだ。
第3章に続く