2022年6月14日・防弾少年団が伝説になった日

今回活動休止という発表を聞き、メンバーのコメントも知って「なるほど」と。。。もう、これ以上続けられないとは思っていた。

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2018ビルボードの大賞授賞式で

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シンクロしたダンスが美しいK-POPアイドルグループだ

“LOVE YOURSELF”公開の時

私はBTSを2014年から観てきたが、”I NEED U”からの凄まじい人気ぶりを横目で見ながら、自分なりの解説をしてきた。

メンバーは

「高く飛びたいと思ってはいたが、こんなに高いところを飛ぶとは思わなかった」

と語っていた時期もあって、苦しいだろうと思っていた。むしろ、よく今まで続けたと、その責任感と意欲、努力に対して本当に心から敬意を表したい。

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“I NEED U”

元々、BTSのコンセプトは「10代20代に向けられる社会的偏見や抑圧を防ぎ、自分達の音楽を守り抜く」というものだった。デビューした当時の年齢が10代から20代前半の彼らは、まるでBTSのストーリー化されたMVのシリーズの、問題を抱えた登場人物とリンクする様に、そのストーリーを生きていたようにさえ思える。

“BUTTERFLY”

美しく神秘的で、汚れのない少年達の様な印象は、BTSというグループのイメージそのものにもなって行った。

花様年華、WINGS、NOT TODAY(WINGS外伝)と続く中で、その人気はアジアからヨーロッパ、そしてアメリカへと飛び火して行った。

ビルボードミュージックアワードの連続受賞やMAMAの大賞受賞など、トロフィーに埋まるような人気が続いた。まず花様年華のMVでは衝撃的な映像で訴え、苦悩を抱える若者についてMVで表現できうる限りの問題提起をした。そして次に続く曲の”BUTTERFLY”では、仲間の大切さを表現し、美しい映像と透き通るようなハイトーンボイスがこのシリーズが持つ強いメッセージと今までに観た事がないK-popグループの才能を感じた。

そして、”WINGS”。。。このシリーズにはリーダーRMが強く影響を受けた原本があると言って、ヘルマンヘッセの”デミアン”の名前を挙げた。本は、瞬く間に完売して行った。

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” WINGS”

ここからBTSの快進撃は始まったような気がする。

その頃、私は今はもう無くなってしまったが、 Google plusの中堅コミュニティ「BTS Dance Line」のオーナーをしていた。集まってくるのは欧米のティーンズのARMYで、私のポストの中で毎日誰かが”WINGS”について議論していた。暗いイメージをカットしてしまった日本版MVでのデビュー当時のBTSは、アイドルという扱いでしかなかったが、議論好きの欧米人にとって韓国版のMVはものすごく刺激的で新しいイメージの数々だったのだろう。

私はその現象を見て、すごいグループだとただただ感心していた。こんなグループは2度と現れないとも書いた。

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“WINGS” ダンスの天才 J-Hopeが殻を破れずにもがき苦しむ少年の心をキングオブダンスの名に相応しい表現力で魅せる

BTSが作り出す楽曲は素晴らしく、どれもがBTSらしさは残しながらそのバラエティは数知れない。ヒットソングを作り出す天才の作詞作曲家とプロデューサーとダンサーとそれを表現するパフォーマーが、美しいこの七人のメンバーで完璧に揃っている。

オールマイティなのだ。

歌詞やMVの内容は、10代から20代、大人になる時に抱える心の問題に焦点を当て、それを彼らのファンであるARMYと共に乗り越えようとポジティブなメッセージを送る。彼らは自らの悩みも正直に歌詞にする中で、いつの間にかネガティブな状況や心境を抱えるARMYたちの救済者のようにもなって行く。

そして、事実彼らの成長と花様年華から続く一連のストーリーは見事にリンクして、自らも少年のイメージから立派な青年へと変化して行った。

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“NOT TODAY”

”WINGS”のすぐ後に公開した”NOT TODAY”は衝撃だった。

それまでの”WINGS”の静寂を吹き飛ばす様な強烈でポジティブなメッセージだった。そして次のシリーズ”L OVE YOURSELF“の公開と、原案の元となったマインドフルネスの本”Into The Magic Shop”の本の紹介など、本当に敏腕ディレクターが脇を固めている様な隙のない流れだった。

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“LOVE YOURSELF”

時代がコロナ禍へと突入して行く中で、彼らの明るさ、ポジティブなメッセージはSNSも駆使した伝達方法でティーンズのみならず、人種も世代も超えたARMYの指示を獲得して行く。

”Map of the soul: Persona”そして”ON”で締め括られた”花様年華”から続く大きなシリーズは、本当に7人が血と汗と涙とで作り上げた音楽史に残る傑作だと思う。

リーダーRMがこだわったのは、成長して行く中で誰もが受け入れなければならない悪の存在だ。そのテーマがヘッセの”デミアン”の中でも語られ、ユングの哲学書”Map of the soul”の中にもあった。

普遍的なテーマと自分たちの変化していく状況をリンクさせる様に表現するそのバランス感覚は、まさにIQ148を誇るリーダーRMの緻密な頭脳とセンスに他ならないと思う。

RMの時代を読み取る力とそこに散らばったイメージをまとめ上げて行く才能は、並外れていると思う。

ユニセフのスピーチ

彼らのポジティブなメッセージは、国連の2度にわたるスピーチやバイデン大統領とのアジアンヘイトに関する意見交換会など、平和と正義の使者の様な扱いにもなって行った。

RMが活動休止の理由の一つにあげたのが、自分達のアイデンティティを失ってしまったというところだった。一連のストーリーは、”ON”で終わっていたのだと。あのビッグヒット曲の連続の”DINAMITE”から続く”Permission To Dance” “BUTTER”などの英語の歌詞の曲を歌っているときは、もう何をやっているのかわからなくなったと言って涙ぐんでいたが、人気は年齢も人種も飛び越えて世界規模になって行く、国を背負った様な会議や招待も完璧にこなす。次回作を全世界のARMYが待ち望んでいる。

彼らの才能と人気はこんな異常事態を作ってしまったのだ。

国連会議室から”Permission To Dance”のパフォーマンスをする七人

バイデン大統領が言っていた「正しい人の発言は、皆が聞くよ。」というあたりで、私はもうすぐこのグループは終わるだろうと思った。アメリカの現大統領に「正しい人」というレッテルを貼られた人間が、この先どう生きて、どんな言葉を歌詞にすれば良いのか。

それと、彼らのタイムリミットは、ストーリーと一緒に生きた分、終わりも見えていた。

防弾少年団はその名前の通り、ネガティブな状況や心境からARMYを守り、自らも少年から青年へと成長して行く過程の中での葛藤なども見せることによって、ポジティブなメッセージを発信してきたのだ。

このリアルとファンタジーの世界を同時に生きた七人のメンバーにとっての第1章は、確かに終わったと思う。私はこの先に第二章があったとしても、それは防弾少年団のシリーズの一つとしては考えられない。

人生に一度しかない多感な10代から20代にかけてを、彼らは全身全霊をもってその場を駆け抜けた。

時には批判も受け、傷つき倒れ、でも立ち上がって突っ走ってきた9年間だった。リーダーRM が自分はこのままだとラップの拡声器と英語の通訳で終わってしまう。もっとクリエーティブな部分をやるには時間が必要だ、と言った。

これ以上歌う言葉が見つからない、といったSUGAの言葉も正直な心の声だと思う。作詞作曲の天才二人だからこそ準備期間も制作時間も無い中でやってしまえたが、今後はもう出来ない。

今や彼らの行く手を塞ぐものは何もないのだ、時間を除いて。。。。

しかし、確かに私たちは見せてもらった。全力で駆け抜けた七人の軌跡、美しく輝く防弾少年団というK-POPアイドルが作り上げた前人未到の世界を共有したのだ。

彼らのソロ活動は、もちろん応援する。一人一人が持つ実力は、今後彼らが選ぶどんな場面でも、誰もがセンターに相応しい存在だ。でも、今は自分が本当に必要な事をして、希望通りグループとしての活動は休んで欲しい。

今は、この音楽史に残る偉業を達成した彼らに、感謝とお疲れ様を伝えたい。

最後は、軽くメンバー紹介で終わります。(年齢の高い順に)読んでくださった方、ありがとうございました。

防弾少年団(BTS)

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JIN 1992年12月4日生 ビジュアル・サブボーカル
正統派のイケメンで性格は至って常識的で明るい。イートジンでは、美味しそうに食べまくる姿が面白い。ハイトーンボイスが美しく、ソロの時には圧倒的な存在感を見せる。

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SUGA 1993年3月9日生 リードラッパー
BTSの数々のヒット曲のほとんどが彼の天才的な作詞作曲によるもの。他のアーティストとのコラボも多い。最近の大ヒット曲は、PSYとコラボした”That That”.

J-Hope 1994年2月18日生 メインダンサー・リードラッパー
キングオブダンスの名の通り、彼のダンスは唯一無二のオリジナリティがあり、BTSのダンスの柱となっている。

RM 1994年9月12日生 リーダー・メインラッパー
BTSのリーダーでIQ148の天才。彼の作り出す世界とインターナショナルな存在感で、BTSを引っ張ってきた能力は本当に素晴らしい。

JIMIN 1995年10月13日生 リードボーカル・リードダンサー
彼はシャープなJ-Hopeの表現力とはまた一味違う粘りのあるセクシーなダンスでJ-Hopeと人気を二分する。純粋で優しい人柄が多くのファンに愛されている

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V 1995年12月30日生 ビジュアル・サブボーカル・リードダンサー 西洋人の骨格に東洋人の切れ長のアーモンドアイがついたビジュアルが魅力的だ。4次元キャラとも言われ子供っぽい性格だが、時々びっくりするほどセクシーな表現が神秘的だ。

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JUNG KOOK 1997年9月1日生 メインボーカル・リードダンサー
最年少ながらBTSのセンターを務め、歌もダンスも日に日に上達しているのを感じる。運動神経も抜群で、踊りも歌も完璧にこなす。黄金マンネと呼ばれている。

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